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ものがたり歳時記 (マガジンID:0000152969)[まぐまぐ] メールマガジン登録 メールマガジン解除 |
◆今月の歳時記はどんなストーリー?[サンプル]
◆ものがたり歳時記 No.025 ━━━━━━━ 葉桜の季節 [1] ━━━━━━━━━━━━━ 2005/04/07 ━ その前の日が、バレンタインデーだった― ―。 1 「あ……」 1冊の本を手に持ったまま、みなとは床に ぺたんと座り込んだ。彼女の周りには、いく つものダンボールと詰めかけの引っ越し荷物 そしてあたたかすぎる春の陽射し。春という のは、なにかと危険な季節である。ぽかぽか と太陽に暖められてしまうと、ついつい手の 動きが止まってしまい、ヘタをすると居眠り をしていたりもする。 そんなアブない環境で、みなとは引っ越し の準備に大あわてなのであった。みなとはこ の4月から、コンピューター関係の会社で働 いている。それも大手の西内電機――の子会 社である。 本来なら、4月1日から会社の寮(といっ ても、会社が借り上げたアパート)に入る予 定だったのだが、リフォームに手間取り、よ うやく明日、10日遅れの入居となったのであ る。 とはいっても、元々荷物は少ないし、すぐ に終わるだろうと思っていたものだから、次 々と出てくる懐かしいものに手を止め続け… …予定した時刻に、荷造りは終わりそうにな かった。 「まさか、いまごろ出てくるとはねぇ……」 なつかしそうに、みなとはパラパラとペー ジをめくった。 文庫本やコミックスが大半を占めるみなと の数少ない蔵書の中で、唯一異彩を放ってい る、新書サイズのハードカバー。表紙には、 胸元で小さく手をふる少女。ちょうど顔のと ころで、写真は切られている。 ――この娘は、どんな表情、してるんだろ う。 髪を束ねていたゴムをはずして、みなとは しげしげとその本をみつめた。 その本は、由紀彦から借りたものだった。 確か、半年ほど前だった。そのときみなと と由紀彦は学校の帰りに本屋に立ち寄った。 その時に由紀彦が購入した本だった。お気に 入りの作家の新刊で、駅までの帰り道で、由 紀彦はずいぶんとその作家についてしゃべっ ていたのを、みなとは覚えている。そのとき に、 「今度貸してね」 とみなとが言ったら、 「じゃあ、貸してやるよ」 と、由紀彦は買ったばかりのその本を、み なとに手渡したのだった。 それから半年。借りていたこともすっかり 忘れていたこの本が、このタイミングで出て くるなんて……。 由紀彦は、先月までみなとの同級生だった オトコ。二人の関係は、単なるオトコ友達… …だとみなとは思っていた。つい1ヶ月ほど 前までは。 その本を手に取ったまま、みなとはしばら く考えた。 このままずっと、預かったままにしておく というのが、ひとつ目の選択肢。そして、ち ゃんと返すというのが、ふたつ目の選択肢。 「イイワケが、できてしまった……」 つぶやくと、大きく息を吸って、みなとは 手元の携帯電話を手に取った。 --------------------------------------- (C) Copyright omimi この物語フィクションです。 実在する人物・団体とは関係ありません。 無断転載は禁止です。 --------------------------------------- ■毎週木曜日発行■ ■ものがたり歳時記 Web Site■ 配信中止などはこちらで。 http://www.omimi.com/saijiki/index.htm ■バックナンバー http://www.melma.com/mag/25/m00124525/ ※バックナンバーをメールで配信希望の方は omimi@omimi.comまでメールを。 ■ものがたり歳時記らいなーのーつ[blog] あとがきとかひとりごととか載せてます。 http://blog.melma.com/00124525/ --------------------------------------- |
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